【最新】獣医師が言う!!小型犬に多い「パスツレラ症」の予防・対処・治療を徹底解析

【最新】獣医師が言う!!小型犬に多い「パスツレラ症」の予防・対処・治療を徹底解析

Mog wan
安心犬活

パスツレラ症とは?小型犬における発症の実態と基礎知識

パスツレラ症の概要

パスツレラ症とは、「パスツレラ属」という細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は、犬や猫などの動物の口腔内や呼吸器に常在していることが多く、咬傷や引っかき傷、または動物との濃厚な接触によって感染することがあります。人にも感染する人獣共通感染症の一種としても知られています。

小型犬においては、免疫力の弱さや口腔環境の影響により、特に感染のリスクが高まるとされています。特に高齢犬や持病を抱える犬では、軽度な症状から重篤な疾患へと進行する可能性もあるため、早期発見と適切な対応が重要です。

感染経路と発症メカニズム

パスツレラ菌は、動物同士の接触、特に噛みつきや舐め合いといった行動によって体内に侵入します。主な感染経路は以下の通りです:

  • 咬傷・引っかき傷からの侵入
  • 傷口を舐めることによる接触感染
  • 呼吸器系からの吸入感染(まれに)

侵入後、菌は皮膚や皮下組織に炎症を引き起こし、化膿性の腫れや発熱、痛みを伴う症状を呈します。進行するとリンパ節腫脹や敗血症を引き起こすこともあります。

小型犬に多い理由

小型犬がパスツレラ症にかかりやすい背景には以下のような要因があります:

  • 顔を舐めるなど、飼い主との密接な接触が多い
  • 小さな体格ゆえに皮膚や粘膜が傷つきやすい
  • 口腔ケアが不十分なことが多く、菌の繁殖が進みやすい

こうした理由から、小型犬の飼い主は、日常的な衛生管理に細心の注意を払う必要があります。

人への感染リスクも考慮を

パスツレラ症は動物から人にもうつる感染症であり、特に子どもや高齢者、基礎疾患を持つ人は注意が必要です。犬の口を直接舐めさせない、傷がある場合は触れさせないなどの対策も、予防の一環として推奨されます。

主な症状とその見分け方

主な症状とその見分け方

初期症状の特徴

パスツレラ症に感染した小型犬では、初期段階で見られる症状は比較的軽度なものが多く、風邪や他の皮膚炎と見分けがつきにくいのが特徴です。以下のような兆候が見られた場合は、注意が必要です。

  • 傷口の腫れや発赤
  • 局所的な熱感
  • しきりに患部を舐める
  • 微熱または元気消失

これらは、パスツレラ菌が皮膚または皮下に感染し始めたサインです。特に咬まれた、引っかかれた、あるいは口まわりに傷がある場合は、速やかに経過観察を行いましょう。

中等度〜重度の症状

感染が進行すると、以下のようなより重篤な症状が現れることがあります。

  • 明らかな膿の排出
  • 発熱や食欲不振
  • リンパ節の腫れ(顎の下や脇など)
  • 呼吸が荒くなる(呼吸器感染時)
  • 関節の腫れや痛み(菌が血流に乗って関節に達した場合)

これらの症状が確認された場合は、パスツレラ症の可能性が高いため、ただちに動物病院を受診すべきです。重症化すると、敗血症や多臓器不全のリスクが高まるため、迅速な対処が求められます。

見分けるためのチェックポイント

パスツレラ症と他の疾患との違いを判断するためには、いくつかの観察ポイントがあります。

  1. 外傷の有無:噛み傷や引っかき傷があるか
  2. 発症までの期間:傷ができてから1〜3日以内に腫れや熱が出たか
  3. 症状の局在性:腫れや膿が特定の部位に集中しているか
  4. 全身症状の有無:発熱、元気消失などの全身性の症状があるか

これらを確認することで、パスツレラ症を早期に見つけやすくなります。とくに飼い主が咬まれた・引っかかれた直後の症状を見逃さないよう、日々の観察が鍵となります。

獣医師が解説する予防法と日常ケア

獣医師が解説する予防法と日常ケア

パスツレラ症を防ぐための基本的な考え方

パスツレラ症の予防には、「感染経路を断つ」「免疫力を高める」「日常的な衛生管理を徹底する」の3つが重要です。特に小型犬は体の構造や生活習慣上、細菌感染のリスクが高いため、飼い主の注意深いケアが必要です。

1. 口腔ケアの徹底

パスツレラ菌は口腔内に常在していることが多く、歯周病などをきっかけに増殖しやすくなります。口の中を清潔に保つことが、最も基本的で効果的な予防手段です。

  • 毎日の歯磨きを習慣化する
  • 口臭や歯石のチェックを定期的に行う
  • 獣医師による定期的な歯科検診を受ける
  • 歯磨きガムや洗浄スプレーなどの補助アイテムを活用する

2. 外傷の予防と早期対応

咬傷や引っかき傷を介して感染するケースが多いため、傷を負わせない環境づくりも大切です。

  • 散歩中は他の犬との接触に注意する
  • 新しい犬と初めて対面する際は距離を保つ
  • 室内では尖った家具の角を保護するなど、物理的な安全対策を講じる
  • 傷を発見した場合はすぐに洗浄・消毒し、必要に応じて動物病院へ

3. 飼い主と犬の接触ルールを決める

パスツレラ症は人獣共通感染症であり、人から犬、または犬から人への感染を防ぐことも重要です。

  • 犬に口を舐めさせない
  • 飼い主に傷がある場合は犬との接触を控える
  • 免疫が弱い人(高齢者、子ども、病中の人)は注意して接触する
  • 犬との遊びの後は必ず手洗いをする

4. 免疫力をサポートする生活習慣

健康な免疫状態を維持することで、感染への抵抗力を高めることができます。

  • バランスのとれた食事を与える
  • 適度な運動を取り入れる
  • ストレスを避ける生活環境を整える
  • 定期的な健康診断を受ける

動物病院で行う検査と診断プロセス

動物病院で行う検査と診断プロセス

パスツレラ症の診断はどう行われるか?

パスツレラ症が疑われる場合、動物病院では症状の確認だけでなく、感染の有無を科学的に裏付けるための検査が行われます。正確な診断によって、適切な治療方針が立てられるため、早期の受診と診断が重要です。

1. 問診と視診による初期評価

最初に獣医師が行うのは、飼い主への問診と目視による評価です。以下の点を中心に確認します:

  • 最近、他の動物と接触したか
  • 咬まれたり引っかかれたりした形跡があるか
  • 腫れや膿、発熱などの症状の有無
  • 飼い主や同居人に感染症状が出ていないか

この時点でパスツレラ症が強く疑われる場合には、追加の検査に進みます。

2. 細菌検査(培養検査)

患部から採取した膿や滲出液を用いて、細菌の培養検査が行われます。これにより、感染源となっている菌の特定が可能となります。

  • パスツレラ菌が検出されることで確定診断が可能
  • 他の細菌との混合感染がある場合も検出可能
  • 感染菌の薬剤感受性を調べることで、最適な抗生物質を選択できる

3. 血液検査

血液検査は、感染の広がりや全身状態の評価に用いられます。具体的には以下の項目が見られます:

  • 白血球数の増加(感染のサイン)
  • 炎症マーカー(CRP)の上昇
  • 肝機能や腎機能への影響の有無

特に重症化している場合や、敗血症が疑われる場合には、全身の状態把握が不可欠です。

4. 画像診断(必要に応じて)

炎症が深部に及んでいる場合や、関節や肺への感染が疑われる際には、レントゲンや超音波検査が実施されることもあります。

  • 関節炎や骨髄炎の有無を確認
  • 呼吸器感染への波及を評価

これらの検査結果をもとに、感染の程度・広がり・全身への影響を総合的に判断し、次の章で解説する治療方針が決定されます。

治療方法と回復までのケアポイント

治療方法と回復までのケアポイント

パスツレラ症に対する主な治療方針

パスツレラ症の治療は、感染の進行度や犬の健康状態に応じて選択されます。多くの場合、抗生物質の投与が中心となりますが、症状が重い場合には入院治療や外科的処置が必要になることもあります。

1. 抗生物質による内科的治療

もっとも一般的なのが、パスツレラ菌に有効な抗生物質の投与です。細菌培養検査の結果をもとに、効果の高い薬剤が選択されます。

  • ペニシリン系やセフェム系抗生物質が第一選択となることが多い
  • 投薬期間は症状の重さに応じて7〜14日程度
  • 錠剤、シロップ、注射など、状態に応じて投与形態を選択

飼い主は、処方された薬を正しく使い切ることが重要です。途中で自己判断による中止をすると、再発や耐性菌のリスクが高まります。

2. 患部の処置・消毒

皮膚や皮下に膿が溜まっている場合は、局所の処置が必要です。

  • 傷の洗浄と消毒
  • 膿の排出(切開を行うことも)
  • 抗菌軟膏の塗布や包帯固定

傷口を舐めないよう、エリザベスカラーを装着するケースも多く見られます。

3. 入院・点滴などの全身管理(重症例)

感染が広範囲に及んでいる、または敗血症や呼吸器症状を伴っている場合は、入院治療が必要です。

  • 静脈点滴による水分・抗生物質の投与
  • 酸素吸入(呼吸困難がある場合)
  • 栄養管理と経過観察

治療の成否は早期対応に大きく依存するため、放置や自己判断は厳禁です。

4. 自宅療養中の注意点

治療後、自宅で療養を行う際には以下の点に留意しましょう。

  • 傷口を清潔に保ち、舐めさせない
  • 指示通りに薬を投与し、勝手に中止しない
  • 食欲や元気の有無、発熱、膿の再発などを毎日チェック
  • 異常を感じたらすぐに再診を受ける

また、症状が落ち着いても定期的な再検査を行うことで、再発や慢性化のリスクを軽減できます。

飼い主として知っておくべき注意点と予防の意識改革

飼い主として知っておくべき注意点と予防の意識改革

「うちの子に限って」は通用しない

パスツレラ症は、健康な犬でも潜在的に保菌している可能性があり、症状がないまま他の動物や人に感染するリスクを秘めています。特に小型犬の場合、見た目は元気でも口腔内の衛生状態や免疫力が万全とは限りません。「うちの子は大丈夫」と油断することで、感染のリスクを高めてしまう可能性があります。

飼い主自身が「感染源にもなりうる」「再発しやすい疾患である」ことを理解し、継続的な予防と観察の習慣を身につけることが重要です。

多頭飼育・家庭内での対策ポイント

複数のペットを飼っている家庭では、1匹が感染した場合、他の動物や人への波及にも注意が必要です。

  • 感染が疑われる場合は隔離して経過観察
  • 食器・寝床・タオルなどの共用を避ける
  • 定期的にペットの健康チェックとワクチン接種を行う
  • 子どもや高齢者との過剰な接触を一時的に制限する

また、咬傷事故があった場合は、相手の犬・飼い主双方に情報を伝え、必要があれば人間側の病院受診も検討しましょう。

予防の鍵は「日常の積み重ね」

一度発症すると治療に時間がかかることもあるパスツレラ症ですが、日常のちょっとした配慮で大部分が予防可能です。以下を意識的に実践しましょう:

  • 毎日の口腔ケア
  • 清潔な生活環境の維持
  • 体調の小さな変化を見逃さない観察力
  • 早めの受診判断

こうした地道な習慣が、パスツレラ症だけでなく、他の感染症予防にもつながります。

正しい情報と信頼できる獣医師の活用

インターネット上の情報には、誤った内容や極端な見解も含まれています。症状に不安がある場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談しましょう。

また、病院で得た情報や治療内容は記録しておくことで、万一再発した場合の迅速な対応につながります。正しい知識と冷静な判断が、飼い主としての最大の武器です。