なぜ手作りごはんが注目されているのか?

近年、犬の健康と幸せを重視する飼い主が増えたことにより、「手作りごはん」への関心が高まっています。ペットフードの安全性に対する不安や、食物アレルギーへの対応、さらには年齢や体調に合わせた個別の食事管理が必要とされるケースが多くなってきたことが背景にあります。
手作りごはんの一番の魅力は、「中身がはっきり分かること」です。市販のドッグフードには、加工過程や添加物が含まれていることもありますが、自分で作るごはんであれば、使用する食材や調味料を完全にコントロールすることができます。そのため、アレルギーのある食材を避けたり、好みに合わせたアレンジができるのです。
また、手作りごはんは飼い主と犬とのコミュニケーションにもつながります。食事の時間がより楽しい時間となり、「家族の一員」としての絆を深めるきっかけにもなります。
ただし、手作りには栄養バランスを崩すリスクもあるため、正しい知識をもって取り組むことが大切です。
手作りごはんの基本ルールと注意点

犬に手作りごはんを与える際には、いくつかの基本ルールと注意点を押さえておく必要があります。誤った知識で食事を与えると、栄養不足や過剰摂取、食中毒などの健康リスクを引き起こす可能性があります。
栄養バランスを意識する
犬の健康を維持するためには、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取させることが大切です。特にタンパク質は犬にとって重要な栄養素であり、肉や魚、卵などを中心に構成するとよいでしょう。一方で、人間用の味付けを施さないように注意し、素材本来の味を活かす調理が基本です。
与えてはいけない食材を知る
手作りごはんでは、犬にとって有害な食材を避けることが最優先事項です。以下のような食品は絶対に与えてはいけません。
- 玉ねぎ、ネギ、ニンニク(赤血球を壊す成分を含む)
- チョコレート(テオブロミン中毒の原因)
- ブドウ・レーズン(腎障害のリスク)
- アボカド(中毒成分ペルシンを含む)
- 香辛料、塩分、アルコール
また、調味料や油を多用した料理も避けましょう。犬の体は人間ほど塩分や脂肪を処理できません。
一気に変えすぎない
急に手作りごはんに切り替えると、消化器官がびっくりして下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。まずは普段のフードに少しずつ混ぜながら、数日〜1週間ほどかけて切り替えるのが理想的です。
調理に必要な器具とおすすめ食材の選び方

手作りごはんを始めるうえで、調理器具と食材選びは非常に重要です。特別な機材を揃える必要はありませんが、安全で衛生的に作るための基本的なツールと、犬に適した食材の選び方を押さえておくことが大切です。
最低限そろえたい調理器具
以下の器具があれば、手作りごはん作りはスムーズに進みます。
- まな板・包丁:食材を安全にカットするために、犬専用のまな板があると衛生面でも安心です。
- 鍋・フライパン:茹でたり蒸したりするのが基本調理法。炒める場合も油を使わず加熱調理が可能です。
- 計量カップ・スプーン:適量を意識して作るために必須。特に小型犬の食事には細かい計量が重要です。
- 保存容器:作り置きを冷蔵・冷凍保存する際に便利です。密閉できるタイプがおすすめです。
犬に適したおすすめ食材
安全に与えられる主な食材は、以下の通りです。
- タンパク質源:鶏肉(ささみ・胸肉)、豚肉(脂の少ない部位)、白身魚、卵(加熱済)
- 炭水化物:白米、さつまいも、じゃがいも、かぼちゃ(いずれも加熱が前提)
- 野菜類:にんじん、ブロッコリー、小松菜、キャベツ(細かく刻み加熱するのが基本)
- 脂質補助:少量の亜麻仁油やオリーブオイル(かけるだけでOK)
食材選びで気をつけたいこと
できるだけ無農薬や添加物の少ない新鮮な食材を選ぶようにしましょう。また、初めて与える食材はアレルギー反応が出ないかどうか、少量ずつ試すことが重要です。
レシピ1 – 鶏ささみとかぼちゃのおじや

※写真はイメージです。実際の出来上がりとは異なります。
ここからは、実際に作ってみたい犬用レシピを紹介していきます。第1弾は、消化にもやさしく栄養バランスに優れた「鶏ささみとかぼちゃのおじや」です。胃腸が弱めの犬や食欲が落ちているときにもぴったりのメニューです。
材料(中型犬1食分目安)
- 鶏ささみ 50g
- かぼちゃ(皮・種を除く)30g
- にんじん 20g
- 白米ごはん(柔らかめに炊いたもの)80g
- 水 150ml
作り方
- 下準備
ささみは筋を取り、細かく刻む。かぼちゃとにんじんは皮をむいて1cm角程度に切る。 - 煮る
鍋に水を入れ、ささみ・かぼちゃ・にんじんを加えて中火で煮る。食材が柔らかくなるまで煮込む(約10分)。 - ごはんを加える
炊いたごはんを加え、さらに弱火で5分ほど煮て、全体がとろっとしたら火を止める。 - 冷ます
人肌程度まで冷ましたら完成。熱いまま与えないよう注意しましょう。
栄養ポイント
- 鶏ささみは脂肪分が少なく高タンパク。
- かぼちゃとにんじんはビタミンA・βカロテンが豊富で免疫力アップに貢献。
- ごはんでエネルギー源をしっかり補給できます。
※塩やだしなどの調味料は一切不要です。素材のうま味だけで十分おいしく仕上がります。
レシピ2 – 白身魚と野菜の蒸し煮

※写真はイメージです。実際の出来上がりとは異なります。
2つ目のレシピは「白身魚と野菜の蒸し煮」です。魚は消化によく、低脂肪で栄養価が高いため、ダイエット中やシニア犬にもおすすめです。野菜と一緒に蒸し煮にすることで、素材の甘みと栄養をしっかり引き出せます。
材料(中型犬1食分目安)
- タラなどの白身魚(骨なし・皮なし)60g
- キャベツ 20g
- にんじん 15g
- さつまいも 30g
- 水 100ml
作り方
- 下ごしらえ
魚は骨と皮を完全に取り除き、一口大にカット。キャベツは細かく刻み、にんじんとさつまいもは薄くスライスする。 - 蒸し煮する
鍋に水を入れ、すべての具材を加えてふたをして中火で蒸し煮する。具材が柔らかくなるまで、10〜15分程度が目安。 - 冷ます
加熱が終わったら、人肌程度まで冷ましてから与える。
栄養ポイント
- 白身魚は高タンパク・低脂肪で消化吸収に優れている。
- キャベツには整腸作用があり、便通の改善にも効果的。
- さつまいもはエネルギー源として優秀で、食物繊維も豊富。
特に魚を使う場合は、骨を完全に取り除くことが重要です。細かい骨でも喉に刺さる危険があるため、丁寧な下処理を行いましょう。
レシピ3 – 卵とブロッコリーのミニ炒めごはん

※写真はイメージです。実際の出来上がりとは異なります。
3つ目のレシピは、簡単に作れて彩りも良い「卵とブロッコリーのミニ炒めごはん」です。タンパク質・ビタミン・食物繊維が一皿にバランスよく含まれ、忙しい日の時短メニューとしても重宝します。
材料(中型犬1食分目安)
- 卵 1個
- ブロッコリー 20g
- にんじん 10g
- 白米ごはん 70g
- オリーブオイル(少量)小さじ1/2
作り方
- 下準備
ブロッコリーとにんじんは細かく刻み、電子レンジや鍋でやわらかく加熱しておく。 - 炒める
フライパンにオリーブオイルを薄く敷き、溶き卵を入れてスクランブルエッグ状に火を通す。加熱した野菜とごはんを加えて全体を混ぜるように炒める。 - 冷ます
火を止め、十分に冷ました後に器に盛りつけて完成。
栄養ポイント
- 卵は犬にとって理想的なタンパク源で、免疫力強化や筋肉の維持に貢献。
- ブロッコリーは抗酸化成分が豊富で、老化防止にも効果的。
- にんじんは皮膚や被毛の健康維持に役立つビタミンAを多く含む。
※炒める際の火加減は中火以下にし、焦げや油の過剰摂取にならないよう注意しましょう。香辛料や塩はもちろん不要です。
保存方法と与え方のコツ

せっかく手間ひまかけて作った手作りごはん。無駄なく、安全に活用するためには、正しい保存方法と与え方の工夫が必要です。ここでは実践的なポイントを解説します。
保存の基本ルール
手作りごはんは保存状態によって品質が大きく左右されます。以下を参考にして、安全に保存しましょう。
冷蔵保存
- 保存期間:2日以内
- 保存容器:清潔な密閉容器を使用
- ポイント:できるだけ空気を抜いて、乾燥や酸化を防ぎます
冷凍保存
- 保存期間:2週間以内
- 保存方法:1食分ずつ小分けにしてラップやフリーザーバッグに入れる
- 解凍方法:電子レンジや冷蔵庫で自然解凍。常温放置はNGです
保存する際は、調理日・食材名を記載しておくと便利です。複数のレシピをまとめて作る場合にも管理しやすくなります。
与え方の工夫
- 温度に注意:必ず人肌程度まで冷ましてから与えましょう。熱すぎると口内をやけどする可能性があります。
- トッピング活用:毎日のごはんに手作りおかずを少しトッピングするだけでも、食欲アップにつながります。
- 残したときの対応:30分以内に食べなかった場合は衛生上、必ず破棄しましょう。
また、毎日の手作りが負担になる場合は、市販フードと併用するハイブリッド方式もおすすめです。栄養バランスを保ちつつ、無理なく継続することが大切です。
まとめとアレンジのヒント

ここまで、犬の健康を考えた手作りごはんの魅力、基本ルール、調理法、具体的なレシピ3種を紹介してきました。最後に、この記事のまとめと、レシピを継続・応用するためのアレンジのヒントをご紹介します。
本記事のまとめ
- 手作りごはんは安心・安全・愛情たっぷり
食材を自分で選び、添加物を避けられることで、健康的な食生活が実現できます。 - 栄養バランスが重要
タンパク質・野菜・炭水化物をバランスよく組み合わせるのが基本。加熱と食材の大きさにも配慮を。 - 簡単レシピでも充分効果的
毎日のメインフードではなくても、トッピングやご褒美ごはんとしても活用できます。
アレンジのヒント
- 旬の野菜を活用する
春はスナップえんどう、夏はズッキーニ、秋はさつまいも、冬は大根など、季節に応じた食材を取り入れることで飽きずに続けられます。 - 食材ローテーションを取り入れる
同じ材料ばかりでは栄養に偏りが出やすいため、魚→肉→卵など、タンパク源を日替わりで変えてみるのも効果的です。 - 食事日記をつける
何を食べたか、どういう反応をしたかを記録しておくと、アレルギーの兆候や好みも把握しやすくなります。
最後に
手作りごはんは、飼い主の“愛情”を形にする手段です。無理なく、楽しみながら続けることが何よりも大切です。今回ご紹介したレシピやノウハウが、あなたと愛犬との暮らしをより豊かなものにするヒントとなれば幸いです。