犬・猫を迎える前に知っておきたい5つのこと|初めてのペットに備える完全ガイド

ペットを迎える前に考えるべき「覚悟」と責任とは

犬や猫を家に迎えるというのは、ただ「かわいいから」「癒されたいから」といった感情だけでは決して済まされない、大きな責任を伴う選択です。それは、10年以上にわたって一つの命と共に暮らすという、人生の一部を捧げる行為でもあります。

私自身、動物が好きで多くのペットと暮らしてきましたが、最初の頃はその“責任の重さ”をきちんと理解していなかったと反省する場面もありました。世話は毎日のこと、体調が悪ければ病院へ走り、老いたときには介護も必要になります。「ペットと暮らす」というのは、単なる同居ではなく、人生のパートナーを迎えることなのだと、経験を通じて深く実感しています。

まず大前提として認識すべきなのは、ペットはモノではなく「命」であるということ。気分で飼って、都合で手放すようなものではありません。病気にもなるし、老いていくし、時には夜中に様子を見に起きることもあります。旅行や外出にも制限が出てくるかもしれません。「自由が減る」と感じる人もいるかもしれませんが、それ以上に得られるものも確かにあります。ただし、それを感じられるのは、ちゃんと責任を果たしてこそです。

加えて、法的な責任も軽視できません。犬を飼う場合は狂犬病予防接種や市町村への登録が義務づけられており、万が一、他人を噛んでしまえば損害賠償が発生する可能性もあります。猫に関しても、近隣とのトラブルを避けるために、飼い方に配慮が求められます。「うちの子に限って」は通用しません。すべての飼い主が、社会の一員としてのマナーとルールを守る必要があるのです。

では、自分にその覚悟があるのか? その確認のために、ぜひ以下のような問いかけを自分にしてみてください。

  • 最期のその日まで、愛情と責任を持って世話を続けられるか?
  • 自分に何かあったとき、代わりに世話をしてくれる人はいるか?
  • 毎日の食事、散歩、トイレの掃除を「義務」と感じずにこなせるか?
  • 急な病気やけがにも対応できる経済的な余裕があるか?

このどれか一つでも「難しい」と感じたなら、もう一度よく考えてみてほしいのです。動物たちは、私たちを選んで家に来るわけではありません。私たちが「選ぶ」立場である以上、その責任はとても重い。だからこそ、飼う前の「覚悟」が何より大切だと私は思います。

命を迎えるということ。それは愛情と同じくらい、強い責任を伴うものです。その重さをしっかりと受け止めたうえで、ペットとの人生を歩み始めてください。

ペットが安心して暮らせる空間は、飼い主の「思いやり」から始まる

犬や猫を家に迎える前に、私たちがまず見直すべきなのは“家そのもの”です。人にとっては快適でも、動物にとっては危険だったり、不安を感じたりすることが少なくありません。私自身、初めて犬を飼ったときは、「家の中にこんなにも“見落としていたリスク”があったのか」と、思わず立ち尽くしたことを覚えています。

たとえば、部屋の片隅に無造作に置いた延長コード。そこにじゃれついた末に感電しかけたことがあり、ゾッとしたのと同時に「この子は何も悪くない、気づかなかった私の責任だ」と強く感じました。

犬や猫はとても好奇心が旺盛です。高いところにジャンプしたり、家具の裏に入り込んだり、小さな物を口に入れてしまうこともあります。こうした行動は、彼らにとっては日常ですが、そこに潜む危険を事前に取り除くのは、飼い主である私たちの役目だと思います。

たとえば、次のような見直しが必要になるでしょう:

  • コード類は束ねてカバーをかけ、噛みつき防止をする
  • 小さなアクセサリーや電池などの誤飲しそうな物は、床に置かない
  • 揺れやすい家具は固定し、ペットがぶつかっても倒れないようにする
  • 洗剤や薬は、彼らが絶対に届かない場所へ移動させる

こういった環境づくりは、単なる“安全対策”ではありません。「この子が安心して暮らせる空間にしてあげたい」という思いやりそのものだと、私は考えています。

また、安全性だけでなく、“心の居場所”をつくってあげることも大切です。犬や猫は、人と同じように、落ち着ける「自分のスペース」があると精神的に安定します。私は家の中の一角に、犬用のベッドとブランケットを置いた小さな「おこもりスペース」を作りました。来客時や疲れたときに、そこへ自然と戻って休んでいる様子を見ると、「この場所があってよかったな」と感じます。

猫であれば、高いところに登れる棚やキャットタワーがあるだけで、行動の自由度がグンと上がります。運動不足の解消にもなりますし、上下運動ができるとストレスの発散にもつながるようです。

そして意外と盲点なのが、床です。フローリングは見た目には美しいですが、犬には滑りやすく、特に年を取ると足腰への負担になります。我が家では滑り止めマットを敷いたことで、足を踏み外すことが減り、安心して走り回るようになりました。

住まいの音や動きも、動物にとっては敏感なストレス源になり得ます。玄関のチャイム、人の出入り、生活音。これらにどう対応するかも、家族構成やライフスタイルと相談しながら考える必要があります。

結局のところ、「ペットのために住環境を整える」というのは、ただの準備ではなく、その子の命を迎え入れる“姿勢”の表れだと思うのです。家は、彼らにとっても一生を過ごす場所。そのスタートを心地よく迎えてもらえるよう、飼い主として丁寧に整えてあげたいと、私は強く思います。

「理想のペット」ではなく「自分に合うペット」を選ぶという視点

ペットとの暮らしは、一時の感情や憧れだけでは続けられません。毎日繰り返される食事、掃除、健康管理…つまり、“生活”そのものです。だからこそ、見た目や流行に流されず、自分たちのライフスタイルにきちんとフィットする動物を選ぶことが、後悔のない幸せな関係への第一歩になると私は思っています。

正直に言うと、私自身も「かわいい!」という気持ちだけで犬種を決めかけたことがあります。でも、実際にその犬の性格や必要な運動量を調べてみたら、「今の私には難しいかもしれない」と冷静に気づかされました。見た目の理想よりも、現実の暮らしに目を向けることの大切さを、身をもって感じた経験でした。

たとえば、エネルギッシュで走ることが大好きな犬種(ボーダーコリーや柴犬など)を迎えるなら、1日1時間以上の散歩や遊び時間を確保する覚悟が必要です。反対に、小型犬の中には室内でも満足できる活動量の子もいて、外出が難しい家庭でも比較的育てやすい場合があります。

猫もまた多様です。私が以前にお世話した猫は、常に膝に乗っていたい甘えん坊タイプでしたが、知人の飼っている猫はまったく触らせず、まるで“隣人”のような距離感で過ごしています。同じ「猫」でも、性格によって必要な接し方はまったく異なります。

ペット選びで意識しておきたいポイントを、いくつか挙げてみましょう。

  • 留守がちかどうか:日中誰も家にいない場合、独立心のある猫や、比較的お留守番が得意な犬種の方がストレスが少ないかもしれません。
  • 住まいのタイプ:集合住宅であれば、鳴き声や足音などに配慮が必要です。防音対策ができるかどうかも判断材料になります。
  • 家族構成:小さな子どもや高齢者がいる場合は、おとなしく穏やかな性格の動物が望ましいでしょう。
  • 経済的なゆとり:大型犬は食費も医療費もかさむ傾向があります。体の大きさは、そのまま維持費に比例することを忘れてはいけません。

それからもうひとつ、私が強くおすすめしたいのが「保護施設からの譲渡」を選択肢に入れること。見た目だけでなく、その子の性格や生活習慣も把握されていることが多く、自分たちの暮らしに合った子と出会える可能性が高いです。実際、私の友人も保護猫との出会いがきっかけで、暮らしに思わぬ温かさが生まれたと言っていました。

ペットを「ほしい」から始めるのではなく、「どんな毎日を一緒に送りたいか」から考えること。これこそが、ペットとの暮らしを無理なく、そして何より心から楽しむためのコツではないでしょうか。

必要な初期費用と「続けるためのコスト」を現実的に見ておこう

ペットを迎えるとき、多くの人がつい見落としがちなのが「お金」の問題です。私自身も、初めて犬を飼ったときは「まあ何とかなるだろう」と楽観的に構えていたのですが、実際には想像以上に細かく、継続的な出費が重なっていきました。

生き物との暮らしは、感情だけでは成立しません。命を預かるということは、その命が必要とするすべてのケアを、時間的にも経済的にも支え続けるということ。だからこそ、初期費用だけでなく、長期的な支出までを見越して準備しておくことが、本当の意味での“迎える覚悟”だと私は思います。


■ ペットを迎える際の初期費用

まず、最初にかかる出費を把握しておきましょう。犬や猫の場合、次のような費用が必要になります:

  • 購入費または譲渡費用(ブリーダー、保護団体など経由によって幅あり)
  • ワクチン接種や初回の健康診断費用
  • マイクロチップ挿入費用(犬の場合は義務化)
  • トイレ用品、ベッド、食器、キャリーケースなどの基本アイテム
  • 必要に応じて、しつけ教室やトレーニングの初期費用

たとえ小型犬や猫でも、これらを合わせると数万円から十数万円は見込んでおいたほうが現実的です。ペットショップを通す場合は、20万〜30万円を超えるケースも珍しくありません。


■ 継続的にかかる「暮らしの費用」

そして何より大事なのは、毎月・毎年の出費を想定しておくことです。生き物である以上、食べる、排泄する、病気になる。こうした日々の営みにかかる費用は、一度きりではなく「ずっと続く」ものです。

以下は目安となるランニングコストの例です:

  • 食費:小型犬や猫で月3,000〜8,000円程度。大型犬なら1万円以上になることも。
  • トイレ用品:猫砂やペットシーツは、定期的に買い足しが必要です。
  • 医療費:年1回のワクチン、フィラリア予防(犬)、ノミ・ダニ対策など。突然の通院にも備えたいところ。
  • ペット保険:最近では加入する家庭も増えており、月1,000円〜数千円。
  • トリミング代:定期的なカットが必要な犬種の場合、月1回で5,000〜1万円以上かかることもあります。

月ベースで見れば1〜2万円前後、年間では10万円〜30万円以上の維持費がかかる計算になります。

さらに見落とされがちなのが、老後の費用です。高齢期には通院頻度が増えたり、介護用の用品が必要になったりと、出費が一気に跳ね上がることもあります。私の愛犬もシニア期に入り、毎月の通院と投薬だけで1万円近くかかるようになりました。経済的な余裕がないと、治療の選択肢を狭めてしまう現実もあります。


「かわいい」だけでなく、「支えていけるかどうか」を基準に

ペットとの暮らしには、想像以上にお金がかかります。それでも、「この子を最期までちゃんと守る」と決めているからこそ、その出費は惜しくない。私はそう思っています。

ですが、勢いだけで飼い始めてしまい、「思った以上に費用がかかる」と途中で悩んでしまう人も多いのが現実。そうならないためにも、迎える前に、初期費用と毎月の生活コストをできる限り具体的にシミュレーションしておくことを強くおすすめします。

ペットとの暮らしを始めるのは、お金の話から目を背けず、しっかり向き合ったとき。経済的な準備もまた、大切な「愛情表現」のひとつなのではないでしょうか。

信頼できる動物病院と、支えてくれる人を見つけておくということ

ペットを迎えると決めたとき、ケージやベッドを準備する人は多いと思います。でも意外と後回しにされがちなのが、「どこの病院にかかるか」という準備です。私自身、最初の犬を迎えたときは完全にそこが抜けていて、軽い下痢をしたときに慌てて夜間病院を検索する羽目になりました。今思えば、「あのとき何かあったら…」と冷や汗ものです。

ペットにとって病院は、人間の私たち以上に“命綱”です。だからこそ、飼い始める前に、信頼できる動物病院を見つけておく。これは、モノを揃えるのと同じくらい、いえ、それ以上に大切な準備だと、私は思います。


◆ 「近い」だけじゃない、相性の良い病院を選ぶという視点

病院選びでまず確認したいのは、やはり場所です。緊急時に車で1時間かかるような場所では、とても安心とは言えません。できれば自宅から15分圏内くらいで探しておくと、何かあったときに冷静に動けます。

ただ、「近いから」だけで選んでしまうと、あとで後悔することもあります。私が通っていた病院は立地は最高でしたが、医師との相性がどうにも合わず、結局ほかの病院へ転院しました。説明が一方的だったり、ペットへの扱いに違和感があったりすると、通うたびに不安が募ります。

ですので、病院選びでは以下のような点を私は重視しています:

  • 医師がこちらの話をちゃんと聞いてくれるか
  • ペットに優しく接してくれるか
  • 診療内容が幅広く、必要なときに専門的な治療も相談できるか
  • 院内が清潔で、待ち時間が過度でないか
  • 無理な治療や押しつけがましい保険勧誘などがないか

最初の受診で全部がわかるわけではありませんが、いくつかの病院を見学したり、軽い相談に行ってみたりするだけでも、相性や雰囲気はある程度見えてきます。


◆ 緊急時や不在時の「万が一」も考えておく

ペットは、私たちが思っている以上に急変することがあります。夜に急に嘔吐が止まらなかったり、休日にぐったりしていたり。そんなときに「どこに電話すればいいんだろう?」と迷わないよう、夜間・休日対応の動物病院の連絡先を、スマホや冷蔵庫などにメモしておくことをおすすめします。

そしてもう一つ大切なのが、「自分がいないときに、この子をどう守るか」という視点です。仕事での長期出張、突然の入院、あるいは災害。どれも他人事ではありません。

私はあらかじめ、近所の信頼できる知人に「万が一のときはお願いできる?」と話を通してあります。ペットホテルもいくつかリストアップして、見学に行きました。「誰かに頼る前提で飼うなんて」と言う人もいるかもしれませんが、命を守る選択肢は、多ければ多いほどいいと私は思っています。


安心の基盤は、病院と「人とのつながり」から

ペットとの暮らしは、ひとりでは守りきれません。信頼できる病院があること、何かあったときに頼れる人がいること。それは、ペットにとっても、飼い主にとっても、大きな安心につながります。

病気やケガのない生活を願うのは当然ですが、「何か起きたときにどう動けるか」を想像して備えること。そこまでできて初めて、本当の意味で「迎える準備ができた」と言えるのではないでしょうか。

「飼いたい気持ち」だけでは足りない——家族全員の合意がスタートライン

ペットを迎えるというのは、単なる“個人の趣味”や“願望”ではありません。それは、家族という小さな社会全体に新しい命を迎え入れることを意味します。だからこそ、「私が欲しいから」という理由だけで進めてしまうのは、正直危うい。むしろ、全員が納得し、協力し合えるかどうかが、ペットとの暮らしを長く穏やかに続けるための分岐点だと、私は実感しています。


◆ なぜ「同意」が必要なのか?

動物は“手がかかる存在”です。ごはんやトイレの世話、散歩、しつけ、病院通い、時には夜中の介抱も。これらは1回で終わるものではなく、毎日、何年も続くことです。

我が家では、以前に「子どもが世話するって言ったから」と猫を飼い始めた家庭がありましたが、結局ほとんどの世話が親にのしかかり、家族間で口論が絶えなかったというケースもありました。ペットに罪はないのに、人間同士のすれ違いが原因で苦しい思いをさせてしまう…。これは避けたい悲劇です。


◆ 特に注意が必要な家庭環境

どの家庭でも話し合いは必要ですが、特に以下のようなケースでは、事前のすり合わせがより重要です。

  • 小さな子どもがいる家庭:動物をおもちゃのように扱わないための教育が不可欠です。咬傷事故などのリスクもあるため、大人の目と手が常に必要になります。
  • 高齢者と同居している家庭:足元にペットがいるだけで転倒のリスクが高まることも。衛生面や体力的な配慮も必要です。
  • 日中に家が空く家庭:共働き世帯や学生の多い家庭では、留守番中の安全確保や寂しさへのケアをどうするかが課題になります。

◆ 迎える前に、家族で必ず話し合っておきたいこと

ペットを「全員で育てる命」として迎えるためには、次のような項目を家族で共有しておくことが大切です。

  • どの動物・品種を迎えるのか?その特性や習性は?
  • 誰が何の世話を担当するか?分担は可能か?
  • 緊急時(病気・ケガ・災害など)は誰が動くのか?
  • 旅行や帰省の際の預け先はあるか?
  • しつけや病院通いなど、想定外の負担をどう調整するか?

これらの話し合いを通して、ようやくペットは「家族全員にとっての存在」になります。そして、その土台があるからこそ、動物も安心してその家庭の一員として根を下ろしていけるのです。


◆ 家族の温度差がペットのストレスになることも

ペットは、家庭内の空気を敏感に感じ取ります。ある人は溺愛し、ある人は無関心……そんな温度差があると、ペットは混乱し、時にはストレス行動につながります。

だからこそ、「誰が一番飼いたがっているか」よりも、**「全員が少なくとも受け入れ、協力する意思があるか」**が何より重要です。

私は、ペットは“癒し”であると同時に、“責任”でもあると思っています。そしてその責任は、家族という単位で背負っていくもの。迎える前にしっかりと人間側の準備が整っていれば、きっとその命も安心して、新しい暮らしを始められるはずです。

適切なしつけと社会化が、信頼関係の土台になる

「ペットがかわいいから」と、すべてを許してしまいたくなる気持ち、私にもよくわかります。つぶらな瞳で見つめられると、多少のイタズラくらい許してしまいたくなるものです。でも、長く一緒に暮らしていくうえで本当に大切なのは、“なんでも許す”ことではなく、安心して共に暮らせるルールを伝えていくことだと私は思っています。


◆「しつけ」とは、ルールを押し付けることではない

犬や猫は、私たちと違って、人間社会のマナーや常識を知って生まれてくるわけではありません。トイレの場所、噛んではいけない物、夜に吠え続けることが迷惑になるということさえ、教えなければ分かりません。つまり、しつけとは、「人と暮らすうえでのルールを、わかりやすく教えてあげること」なのです。

私が最初に犬を迎えたとき、つい“かわいさ”に流されてしつけを後回しにしてしまったことがあります。その結果、吠え癖がつき、近隣トラブル寸前にまで発展してしまいました。そのとき気づいたのは、「ルールを教えてあげなかったのは私の怠慢だった」ということ。叱る前に、きちんと教える責任がこちらにあることを、痛感しました。


◆ 社会化の大切さは「子犬・子猫期」がカギを握る

特に犬の場合、「社会化期」と呼ばれる生後2〜4ヶ月頃の期間はとても重要です。この時期に経験したことが、性格や行動パターンに大きく影響します。私の愛犬も、この時期に近所の人や他の犬と多く触れ合ったおかげで、今でもとてもフレンドリーです。

このタイミングで意識したいこと:

  • 人の手に慣れさせる(耳や口、足先を触られることに抵抗がなくなるように)
  • 家の音や動きに慣れさせる(掃除機、チャイム、来客など)
  • 外の世界を少しずつ見せる(他の犬や人との出会いをポジティブに)
  • 基本的なコマンドを遊び感覚で覚えさせる(「おいで」「待て」「ダメ」など)

こうした経験が、“予測できる安心した生活”を形づくっていくのだと、私は感じています。


◆ 猫にも“安心できるリズム”を

猫はしつけがいらないと思われがちですが、決してそんなことはありません。爪とぎの場所、トイレの使い方、夜間の活動時間をどうコントロールするかなど、猫の習性に合わせて環境を整えることが、実は大きなしつけになります。

強く叱るよりも、「どうすれば望ましい行動を“自然と選ぶ”ようになるか?」という視点が大切です。私の経験では、爪とぎの場所を“ダメな場所”から“してもいい場所”へ変えるだけで、問題行動が嘘のように落ち着いたこともあります。

なお、猫にも社会化期(生後2〜7週頃)があり、この時期に人の手に触れる経験を積むと、人懐こく育ちやすい傾向があります。将来の関係性を考えるなら、ここでの関わり方はとても大事です。


◆ 「叱る」よりも、「褒める」ことで学んでいく

しつけの中で、私が一番大切にしているのは“褒めるタイミング”です。人も動物も、「できたことを認めてもらえると、もっとやりたくなる」もの。理屈よりも、成功体験を積ませることが、しつけには効果的です。

反対に、怒鳴ったり無理に叱ったりしてしまうと、ペットは混乱しますし、信頼関係そのものを壊しかねません。「なぜ怒られたのか」を理解できないまま、飼い主に対する不安だけが残ってしまうのです。


ペットと人、それぞれが心地よく暮らすために

しつけや社会化は、押しつけや管理のためではありません。むしろ、ペット自身が安心して生きていくための道しるべだと思っています。

その子の性格や反応に合わせて、焦らず、丁寧に。私たち人間もまた、教え方を学び、関わり方を磨いていく存在なのかもしれません。大切なのは、「うまく育てること」ではなく、「一緒に学びながら、信頼を深めていくこと」。私はそう信じています。

ペットに伝えるべきは「愛情」だけじゃない——しつけと社会化がつくる、安心の暮らし

ペットと一緒に暮らすうえで、忘れてはいけないのが「しつけ」と「社会化」。つい「かわいいから」と何でも許してしまいたくなりますが、それだけではお互いが疲れてしまう関係になりかねません。むしろ、ルールを教えることは、ペットを守ることでもあると、私は実感しています。


◆ “しつけ”は命令ではなく、一緒に暮らすためのルールづくり

犬も猫も、人間社会のルールなんて知る由もありません。トイレの場所、鳴き方、家具へのイタズラ…。人間側の“当たり前”を伝えなければ、ペットにとってはただの「いつもの行動」です。

私が最初に犬を飼ったとき、甘やかしすぎて夜泣きが続き、近所から苦情が来てしまったことがありました。叱ることがかわいそうに思えて何も教えなかった結果、困るのは犬自身だったと気づいたとき、胸が痛みました。

しつけは怒ることではなく、「安心して暮らすためのルール」を伝えてあげる行為。叱らなくても、わかりやすく教える努力で、ペットの生活も心も安定していくと私は思います。


◆ 社会化期は一生に一度の“学びの黄金期”

犬の場合、生後2〜4ヶ月頃は「社会化期」と呼ばれるとても大切な時期。この時期に見たもの、触れたもの、感じたものが、その後の性格や行動に大きな影響を与えると言われています。

我が家の愛犬も、この時期にさまざまな人や音に触れさせたおかげか、人懐っこく、少々の物音では動じない性格に育ちました。逆に言えば、この時期を逃してしまうと、過度な警戒心や不安を抱えやすくなることもあります。

やってよかったと感じたことをいくつか挙げると、

  • ごはん前の「待て」や「おいで」などの簡単な合図を遊びの延長で覚えさせたこと
  • 掃除機の音やインターホンのチャイムなど、生活音に少しずつ慣れさせたこと
  • 近所の犬や子どもたちとあいさつさせ、他者とのふれあいを体験させたこと

これらはすべて、「この世界は怖くない」と教えてあげるための準備だったのだと思います。


◆ 猫にも、“安心して暮らせる習慣”を

猫は犬ほど指示に従う生き物ではありません。でも、だからといって“放任主義”でいいわけでもありません。トイレの場所、爪とぎのスペース、夜中の大運動会への対策…。猫にとっても、ルールがあるからこそ落ち着ける空間になるのです。

私の経験では、叱るよりも「していい場所」をきちんと示してあげることで、自然と好ましい行動を取るようになりました。たとえば、壁で爪を研ぐ猫には、爪とぎポールを置いて「こっちはOKだよ」と声をかける。すると不思議なことに、だんだん“ダメな場所”には近づかなくなっていきました。

猫にも「社会化期」があり、生後2〜7週頃に人の手や生活音に慣れさせることで、性格が大きく変わることがあります。私の知人が保護した猫は、この時期に人と触れ合ってこなかったため、触ろうとするだけで逃げ回っていました。慣れるまでに数年かかりましたが、それでも今は彼女の膝でくつろぐようになっています。


◆ しつけは「怒ること」じゃない。“伝え方”が信頼関係を育てる

私がしつけで最も大切にしているのは、「褒めるタイミング」です。うまくできた瞬間にほめてあげると、ペットは本当に嬉しそうな顔をします。褒めて、喜ばれて、またがんばる。このシンプルなサイクルが、信頼を育ててくれると感じます。

逆に、怒鳴ったり、叩いたりしてしまうと、ペットは“何が悪かったか”よりも、“飼い主が怖い”という印象だけを残してしまいます。これは、信頼を積み上げるどころか、関係を壊してしまう行為です。


一緒に暮らすとは、“教え合う関係”であること

ペットと暮らす中で、私たちは「教える立場」になることが多いですが、実際は教えられることのほうが多いと私は思っています。

ペットは人間のように言葉で伝えることはできません。でも、行動や表情で、「今、不安なんだよ」「こうしてほしいんだよ」とサインを出してくれます。それに気づき、こちらがどう接するか。しつけとは、そんなお互いに歩み寄る行為なのではないでしょうか。

大事なのは、“従わせる”ことではなく、“わかり合う”こと。ルールは、厳しさではなく、思いやりから生まれるのだと、私は信じています。