はじめに――「小型犬の抜け毛」は意外と深刻な悩み
小型犬は可愛らしい外見と扱いやすさから、多くの家庭で愛されています。しかし、飼い主の多くが見落としがちなのが「抜け毛」の問題です。特に、特定の犬種は抜け毛が非常に多く、日々の掃除やアレルギー対策、衛生面において大きな負担となることもあります。
抜け毛が多い=健康に問題?誤解されがちなポイント
「毛がたくさん抜けると病気なのでは?」と心配される飼い主も少なくありませんが、実は多くの場合、それはその犬種特有の生理現象であり、健康状態に直結しているわけではありません。逆に、季節的な換毛期や被毛の構造によって抜け毛の量が大きく変わることが一般的です。
なぜ抜け毛の多さに注目するべきなのか?
抜け毛は単に掃除の手間だけでなく、以下のような影響を及ぼします。
- アレルギー体質の家族への影響
- 室内の清掃・衛生維持にかかる労力
- 他のペットや家具への毛の付着
- トリミングやブラッシングの頻度が増加するコストと手間
このように、抜け毛の多さは犬との生活において無視できないファクターです。そのため、犬種選びの段階から情報を把握しておくことが、後悔のないペットライフの第一歩となります。
獣医師監修で信頼性の高い情報をお届け
本記事では、現役の獣医師からの意見や実際の臨床経験に基づいて、小型犬の中で抜け毛が多い犬種トップ5をランキング形式でご紹介します。また、それぞれの犬種における抜け毛の原因や対策についても詳しく解説していきますので、飼育中の方にも、これから飼いたいと考えている方にも有益な内容となっています。
第5位 ― パピヨンの華やかな被毛と抜け毛の実態

パピヨンの特徴と魅力
パピヨンは、その名の通り「蝶」のような大きな耳と、優雅に流れる長毛が特徴的な小型犬です。明るく活発な性格で、家庭犬としても非常に人気があります。また、知能も高く、しつけやすい点も飼いやすさの理由です。
なぜパピヨンは抜け毛が多いのか?
パピヨンの被毛はシングルコートであり、ダブルコートの犬種に比べて一見抜け毛が少ないように思われがちです。しかし、実際には年間を通して細かい毛が持続的に抜ける傾向があります。特に季節の変わり目には毛の生え変わりが活発になり、抜け毛量が一時的に増加します。
以下の要因が、抜け毛の多さに影響を与えています:
- 柔らかく細い毛質のため、家具や衣類に付きやすい
- 成犬になると毛量が増え、自然に抜け落ちる量も多くなる
- 室内飼育により、換毛期がはっきりせず1年を通して毛が抜けやすい
抜け毛対策と日常ケア
パピヨンの抜け毛に悩まされないためには、こまめなブラッシングが何よりも大切です。最低でも週に2〜3回、できれば毎日のブラッシングを習慣づけましょう。毛が絡まりやすいため、ピンブラシやスリッカーブラシを使うのが効果的です。
また、以下のような対策も有効です:
- 定期的なトリミングで毛量をコントロール
- 抜け毛を減らす効果がある高品質なフードの選択
- 換毛期には特に掃除の頻度を上げる
パピヨンは抜け毛の管理が欠かせない犬種ですが、しっかりとケアを行えば美しい被毛を保ちながら快適に過ごせる相棒となります。
第4位 ― ポメラニアンのふわふわの裏に潜む抜け毛問題

ポメラニアンの基本情報と人気の理由
ポメラニアンは、小型犬の中でも特に人気の高い犬種の一つで、そのふわふわとしたボリューム感のある被毛が大きな魅力です。見た目の愛らしさに加えて、元気で好奇心旺盛な性格も家庭犬として非常に好まれています。
ポメラニアンの抜け毛が多い理由とは?
ポメラニアンはダブルコートの犬種であり、抜け毛の量が非常に多いことで知られています。ダブルコートとは、外側の「オーバーコート」と内側の「アンダーコート」の2層構造の被毛のことを指します。このアンダーコートが、特に季節の変わり目に大量に抜け落ちることがあります。
抜け毛の多さに影響する要素には以下のようなものがあります:
- 年2回の換毛期(春と秋)に大量の毛が抜ける
- 柔らかく細かいアンダーコートが抜けて床や家具に付着しやすい
- 室内飼育により換毛サイクルが乱れ、1年中抜けるケースも
抜け毛対策とケアのポイント
ポメラニアンの抜け毛に対応するためには、毎日のブラッシングが理想的です。特にアンダーコートが密集しているため、スリッカーブラシやコームを使って奥の毛までしっかり梳かすことが必要です。
そのほか、以下のような対策が効果的です:
- 換毛期にはペット用のバリカンで軽く整えることで抜け毛軽減
- 定期的なシャンプーで毛の絡まりと皮脂汚れを防止
- 毛が落ちやすい環境(カーペット、布製ソファなど)の見直し
ポメラニアンは見た目の可愛さとは裏腹に、被毛の管理が非常に重要な犬種です。定期的なケアを通じて、健康的で快適な環境を保つことが大切です。
第3位 ― チワワ(ロングコート)の意外な抜け毛の多さ

チワワのバリエーションと飼いやすさ
チワワは世界最小クラスの犬種で、「スムースコート」と「ロングコート」の2種類の被毛タイプがあります。特にロングコートチワワはその優雅な毛並みと親しみやすい性格から、多くの家庭で愛されています。体が小さく、運動量も比較的少ないため、マンションなどでも飼いやすいのが特徴です。
抜け毛が多いのはロングコートの方
一般的に「小型犬=抜け毛が少ない」と思われがちですが、ロングコートのチワワは意外と抜け毛が多い犬種に分類されます。これは、被毛が細く長く絡まりやすいため、日常的に毛が自然に抜けて落ちる量が多くなるからです。
さらに以下の要因が、抜け毛の量を増加させる要因となります:
- ダブルコートの個体も多く、換毛期にアンダーコートが大量に抜ける
- 毛質が柔らかく、家具や衣類に絡みやすい
- ブラッシング不足による毛玉化と、それに伴う抜け毛の増加
チワワの抜け毛ケアのポイント
チワワ(ロングコート)の抜け毛対策には、日常的なブラッシングと環境管理が欠かせません。小さな体のため、広範囲に抜け毛が飛び散ることは少ないものの、毛の質によって掃除の手間は決して少なくありません。
以下の対策を取り入れることで、抜け毛問題を軽減できます:
- 週に2〜3回のブラッシングで抜け毛と毛玉を予防
- 高たんぱくで皮膚・被毛ケアに特化したフードを与える
- 換毛期にはシャンプーとドライの頻度を少し増やす
- スムースコートとの比較での注意点を理解しておく
ロングコートチワワは、その可愛らしさと引き換えに、被毛管理への丁寧な配慮が求められる犬種です。抜け毛の特性を理解し、正しく対策することで、快適な共生が可能になります。
第2位 ― ミニチュア・ダックスフンド(ロングヘア)の抜け毛に要注意

ミニチュア・ダックスフンドとはどんな犬種か?
胴長短足のシルエットが印象的なミニチュア・ダックスフンドは、陽気で活発な性格が人気の小型犬です。被毛の種類には「スムース(短毛)」「ワイヤー(剛毛)」「ロング(長毛)」の3タイプがありますが、中でもロングヘアタイプはその美しい毛並みの裏で、抜け毛の多さが課題とされています。
抜け毛が多い理由とその特徴
ミニチュア・ダックスフンド(ロングヘア)はダブルコート構造の被毛を持っており、換毛期になるとアンダーコートが大量に抜け落ちます。また、毛質が細く柔らかいため、抜けた毛が家具やカーペットに絡まりやすいという特徴があります。
抜け毛が多くなる主な原因は以下の通りです:
- 季節の変わり目に発生する大量の換毛
- 被毛の長さにより、抜け毛が目立ちやすい
- 運動量が多く、日常生活の中で毛が自然に落ちやすい
- 毛玉ができやすく、それに伴う抜け毛の悪化
効果的な抜け毛対策と日常ケア
ミニチュア・ダックスフンド(ロングヘア)の抜け毛問題に対応するには、日常的なブラッシングとシャンプー習慣の確立が重要です。特に、アンダーコートが密集しているため、しっかりと毛をとかす必要があります。
おすすめの対策は以下の通りです:
- 週3〜4回のブラッシングでアンダーコートを除去
- 換毛期にはプロによるグルーミングを活用する
- 食事にオメガ3脂肪酸を取り入れ、被毛の健康を維持
- 抜け毛が付着しにくいインテリア素材(レザー、ウッド)を選ぶ
ミニチュア・ダックスフンドはその魅力的な見た目と親しみやすさが魅力ですが、美しい被毛を保つには日頃のケアが不可欠です。特にロングヘアタイプを選ぶ際には、抜け毛対策も生活設計の一部として考えておくべきでしょう。
第1位 ― 柴犬(小型タイプ)の圧倒的な抜け毛量

小型でも侮れない柴犬の抜け毛事情
一般的に「中型犬」として知られる柴犬ですが、最近では体格の小さな個体も増えており、小型犬カテゴリーで飼育されるケースも増加しています。そのため本ランキングでは「小型犬枠」として扱います。見た目は素朴で手入れが少なく感じられますが、実際にはトップクラスの抜け毛の多さで知られています。
抜け毛が多い最大の理由 ― 超密なダブルコート
柴犬の最大の特徴は、非常に密度の高いダブルコートです。この2層構造の被毛は、外的刺激から皮膚を守る役割がある一方で、年に2回、春と秋の換毛期には驚くほどの毛が抜けることが多くの飼い主を悩ませています。
具体的な特徴としては:
- 換毛期には一度のブラッシングでごっそり毛が取れる
- 抜け毛が家の至る所に落ち、掃除の頻度が激増
- 短く硬い毛が絨毯や衣類に刺さりやすく取りにくい
- 体を掻いたり振ったりするだけで毛が舞い上がる
柴犬の抜け毛ケア:徹底した管理がカギ
柴犬の抜け毛に対応するためには、定期的かつ徹底的なブラッシングが不可欠です。特に換毛期には、毎日のブラッシングを行っても追いつかないほどの毛が抜けるため、ペット用の掃除機や空気清浄機の導入も検討すべきです。
主な対策としては:
- ファーミネーターなどの抜け毛除去専用ブラシの活用
- 換毛期にはプロのグルーミングサービスを利用
- 抜け毛を最小限に抑える皮膚・被毛ケアフードの導入
- 掃除しやすい床材(フローリング・タイル等)を選ぶ
柴犬は日本犬ならではの魅力を持つ犬種ですが、その被毛の密度と抜け毛量は、小型犬の中でも群を抜いて管理が大変です。それでも根気強くケアを続ければ、快適な飼育環境を維持できます。
抜け毛が多い犬種に共通する特徴とそのメカニズム

共通点1:ダブルコート構造の被毛
本ランキングに登場した犬種の多くに共通するのが、「ダブルコート」構造の被毛です。これは、外気から体を守る「オーバーコート」と、保温性を高める「アンダーコート」の2層からなる被毛です。特にアンダーコートは細く密集しており、季節の変わり目に一気に抜け落ちる性質を持っています。
ダブルコートを持つ犬種では、以下のようなサイクルで毛が抜けます:
- 春:冬の保温用アンダーコートが抜ける(大量)
- 秋:夏の軽量アンダーコートが抜け、冬仕様に変わる
- 室内飼育では季節感が薄れ、年中抜け続ける傾向
共通点2:細く柔らかい毛質
ポメラニアンやパピヨンなど、細く柔らかい被毛を持つ犬種は、抜け毛が空中に舞いやすく、衣類やカーペットに付着しやすいという特徴があります。このような毛質の犬種では、抜け毛の「量」だけでなく「取りにくさ」も悩みの種になります。
共通点3:被毛の成長サイクルが短い
被毛には「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがありますが、抜け毛の多い犬種はこのサイクルが短く、毛が生え変わる頻度が高い傾向があります。そのため、日々の生活の中で常に毛が抜け続ける状態になってしまいます。
抜け毛の多さは「健康状態」ではなく「体質」
抜け毛が多い=不健康というイメージを持たれがちですが、実際にはその犬種固有の体質や毛の構造によるものがほとんどです。もちろん、極端な抜け毛や皮膚トラブルを伴う場合は病気の可能性もありますが、定期的なケアと正しい知識があれば、過度に心配する必要はありません。
抜け毛の多い犬種と快適に暮らすための5つのポイント

1. 毎日のブラッシングで抜け毛をコントロール
抜け毛の多い犬種と暮らす上で、最も効果的かつ基本的な対策は定期的なブラッシングです。毛が抜ける前にブラシで取り除くことで、床や家具への落毛を大幅に減らせます。特に換毛期には、1日1回のブラッシングが理想です。犬種や毛質に合ったブラシを選ぶことも重要です。
2. 室内環境を抜け毛に適応させる
抜け毛の掃除がしやすい環境を整えることで、ストレスを軽減できます。具体的には:
- フローリングやタイルなど、毛がからみにくい床材
- 洗えるカバーや毛が付きにくいソファ素材の使用
- ペット用空気清浄機や強力な掃除機の導入
日常的な清掃の手間が減ることで、快適な生活空間を保つことができます。
3. 定期的なシャンプーとトリミング
月1〜2回のシャンプーは、抜け毛の原因となる汚れや古い毛を洗い流し、皮膚トラブルの予防にもつながります。また、トリミングやグルーミングによって毛量の調整や毛玉の防止も可能です。特にダブルコートの犬種は、プロのグルーミングを取り入れることでケアの負担が大きく軽減されます。
4. 食事と健康管理で内側からケア
毛の健康は、日々の食生活や栄養状態にも深く関わります。皮膚・被毛の健康を保つためには、以下のような栄養素が重要です:
- オメガ3・6脂肪酸(皮膚の潤いと毛のツヤに寄与)
- 高品質の動物性タンパク質(毛の主成分ケラチンを形成)
- ビタミン類(特にビタミンA、E、B群)
動物病院や専門店で推奨されるプレミアムフードを選ぶことが、抜け毛対策にもつながります。
5. 正しい知識と心構えを持つ
抜け毛が多い犬種と暮らす上で大切なのは、**「完全に防ぐことはできない」**という現実を受け入れ、正しく向き合うことです。こまめなケアと適切な環境づくりを行えば、抜け毛によるストレスは最小限に抑えられます。
また、抜け毛をネガティブに捉えるのではなく、「愛犬と暮らすうえでの自然な一部」として受け入れる姿勢が、より豊かなペットライフへとつながります。