犬が病気にかかりやすい理由とは？環境・年齢・犬種別リスクに注目
犬は人間と同じように、年齢や生活環境、遺伝的な要因によってさまざまな病気にかかりやすくなります。ここでは、犬が病気にかかりやすい主な理由と、それに関連するリスク要因について解説します。
年齢によるリスクの増加
犬も加齢とともに免疫力が低下し、病気に対する抵抗力が弱まります。特に7歳を超えるとシニア犬と呼ばれる年齢に入り、以下のような病気のリスクが高まります。
- 心臓病（僧帽弁閉鎖不全症など）
- 腎臓病（慢性腎不全など）
- 腫瘍（良性・悪性を問わず発症リスクが増大）
これらは犬の寿命にも直結する病気であるため、早期発見と予防が重要です。
環境や生活習慣が与える影響
住環境や飼育スタイルも犬の健康状態に大きく影響します。以下のような環境は病気の原因になりやすいため注意が必要です。
- 運動不足による肥満：糖尿病や関節疾患の原因に
- 不衛生な飼育環境：皮膚病や消化器系疾患を引き起こす可能性
- ストレスの多い生活：免疫低下や行動異常のリスク増加
また、食事内容も見直すべきポイントであり、栄養バランスが取れていないフードを与えることは、内臓疾患や代謝異常を招く原因となります。
犬種ごとの遺伝的リスク
犬種によってかかりやすい病気は異なります。たとえば、以下のような傾向があります。
- チワワやポメラニアン：気管虚脱や心臓病に注意
- ダックスフンド：椎間板ヘルニアの発症率が高い
- ゴールデン・レトリーバー：股関節形成不全や腫瘍性疾患にかかりやすい
犬種ごとの特性を理解し、定期的な健康診断や専門的なケアを取り入れることが、病気予防には欠かせません。
第5位「皮膚炎」～かゆみや脱毛は病気のサイン～
皮膚炎は、犬にとって非常に一般的な病気のひとつであり、見逃されがちな初期症状が多くあります。特にアレルギー体質の犬や、季節の変わり目に皮膚トラブルを起こしやすい犬種にとっては注意が必要です。
皮膚炎の主な原因とは？
犬の皮膚炎の原因は多岐にわたりますが、主に以下の4つが挙げられます。
- アレルギー性皮膚炎：食物アレルギーや花粉、ハウスダストなどが原因
- ノミ・ダニなどの寄生虫：吸血や接触によってかゆみや炎症を引き起こす
- 細菌・真菌感染症：マラセチアやブドウ球菌が原因で炎症や悪臭を伴うことも
- ストレスやホルモン異常：過度なグルーミングや脱毛の一因となる
どの原因も犬の皮膚バリアが弱っている状態では深刻化しやすいため、早期の発見と対処が求められます。
見逃しやすい初期症状に注意
皮膚炎の初期症状は軽微なことが多く、飼い主が気付きにくい傾向があります。以下のような変化が見られた場合は、早めに動物病院での受診を検討しましょう。
- 頻繁に体を掻く、舐める、こすりつける
- 毛が薄くなっている、赤みが出ている
- フケの増加や皮膚のべたつき
- 犬特有の臭いが強くなった
これらの症状は他の皮膚疾患や内臓の問題が関係している場合もあるため、自己判断での治療は避けるべきです。
皮膚炎の予防と日常ケア
皮膚炎を予防するには、以下のような日常のケアが効果的です。
- 定期的なブラッシングとシャンプー：毛の絡まりや汚れの蓄積を防ぐ
- 食事の見直し：オメガ3脂肪酸やビタミンを含む栄養バランスの取れたフードを選ぶ
- 環境の清潔保持：寝具やおもちゃの定期的な洗浄、湿気管理
- ノミ・ダニ対策：通年で予防薬を使うことが効果的
皮膚炎は慢性化すると治療期間が長くなる傾向があるため、「早期発見・早期対応」が基本です。
第4位「外耳炎」～見逃されがちな耳のトラブル～
外耳炎は、犬の耳の中で起こる炎症性の疾患で、特に垂れ耳の犬種や耳毛が多い犬に多く見られます。軽視されがちですが、慢性化すると難治性となり、生活の質に大きく影響することもあるため注意が必要です。
外耳炎の主な原因
外耳炎にはさまざまな原因がありますが、主に以下のような要因が挙げられます。
- 耳の構造的特性：通気性の悪い垂れ耳は湿度がこもりやすく、炎症の温床になりやすい
- 耳垢や汚れの蓄積：皮脂やごみの蓄積が細菌・真菌の繁殖を促進
- アレルギー：食物アレルギーや環境アレルゲンが耳の炎症を引き起こす
- 外部寄生虫：耳ダニの感染が原因になるケースもある
特に高温多湿な季節には発症率が上がるため、定期的な耳のチェックが重要です。
こんな症状が出たら外耳炎かも？
外耳炎の初期症状は軽度な違和感程度のこともありますが、次第に以下のような変化が見られるようになります。
- 頻繁に耳を掻く、頭を振る
- 耳の中から悪臭がする
- 耳垢の色が黄～黒色に変化
- 耳の内側が赤く腫れている
放置すると鼓膜や中耳にも炎症が広がることがあり、深刻な症状へと進行する可能性があります。
外耳炎の治療と予防法
外耳炎は原因に応じた治療が必要となります。動物病院での耳内の洗浄や、抗生物質・抗真菌薬・抗炎症薬の投与が一般的です。再発を防ぐには、日常的なケアも欠かせません。
- 週1回の耳掃除：専用のイヤークリーナーを使い、優しく耳垢を除去
- 耳の通気性確保：垂れ耳の犬には耳の裏側も風通しを良くする工夫を
- 定期的な健康チェック：耳の状態をこまめに確認する習慣をつける
特に、アレルギー体質や皮膚トラブルを抱えている犬は、耳にも症状が現れやすいため、全体的な体調管理が重要です。
第3位「歯周病」～口臭の裏に潜む重大リスク～
歯周病は成犬の約80%以上がかかるとされる非常に一般的な病気で、口臭や歯のぐらつきといった症状の背後に、深刻な健康リスクが潜んでいます。見た目には元気でも、口腔内で炎症が進行しているケースも多いため、日常的なチェックとケアが欠かせません。
犬が歯周病になる原因
犬の歯周病は、主に歯垢・歯石の蓄積によって引き起こされます。以下のような要因が病気の進行を早めます。
- ブラッシング不足：口内の食べかすや細菌が歯垢に変化し、やがて歯石となる
- ドライフード以外の食生活：ウェットフード中心の食事は歯垢が残りやすい
- 加齢：シニア犬ほど免疫力が低下し、炎症を起こしやすい
- 小型犬種：特にトイ・プードルやチワワなどは歯が密集しており歯垢がたまりやすい
歯周病は口内だけでなく、心臓病や腎臓病の引き金になることも報告されています。
初期症状と進行サイン
歯周病は初期段階では気づきにくいものの、以下のようなサインが見られたら注意が必要です。
- 口臭が強くなる
- 歯茎が赤く腫れている、出血している
- 固いものを噛みたがらない
- よだれが増える、食欲が低下する
歯周病が進行すると歯が抜けるだけでなく、顎の骨が溶けるケースもあります。全身疾患につながる前に治療を始めることが大切です。
歯周病の予防と治療
歯周病は予防こそが最も効果的な対策です。治療は麻酔を伴うスケーリング（歯石除去）や、場合によっては抜歯が必要になるため、できるだけ早期の対応を心がけましょう。
- 毎日の歯磨き習慣：犬用歯ブラシと歯磨きペーストで少しずつ慣れさせる
- デンタルガムの活用：噛むことで歯垢の蓄積を抑制
- 定期的な歯科検診：年に1〜2回、動物病院での口腔チェックを受ける
歯の健康は犬の寿命にも関係する重要な要素です。目に見えない病気ほど、飼い主の意識とケアが大きな差を生みます。
第2位「心臓病」～見落とされがちな“静かな進行”～
犬の心臓病は、特に高齢の小型犬に多く見られる重大な疾患です。初期にはほとんど症状が現れず、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。特に「僧帽弁閉鎖不全症（そうぼうべんへいさふぜんしょう）」は犬の心臓病の中でも発症率が高く、早期発見と継続的な管理が非常に重要です。
心臓病の主な種類と原因
犬の心臓病にはいくつかのタイプがありますが、特に注意すべきなのが以下の2つです。
- 僧帽弁閉鎖不全症：心臓の弁が正常に閉じず、血液が逆流することで心臓に負担がかかる疾患。高齢の小型犬（キャバリア、マルチーズ、チワワなど）に多く発症。
- 拡張型心筋症：心筋が薄くなり、心臓の収縮力が低下する疾患。大型犬（ドーベルマン、グレート・デーンなど）に多い。
これらは加齢、遺伝、肥満、運動不足などが複合的に関与する慢性疾患です。
心臓病の初期症状とは？
心臓病は“静かな病気”とも呼ばれ、初期段階では目立った症状が出ません。以下のような変化を見逃さないことが大切です。
- 散歩中にすぐ疲れるようになった
- 階段を上るのを嫌がる、咳が出る（特に朝や夜間）
- 呼吸が浅く速い、横になって寝るのを嫌がる
- 体重が急に減った、または腹部が膨らんできた
これらのサインが現れた場合は、早急に動物病院で心音の確認やレントゲン、超音波検査などを受けましょう。
心臓病の治療と日常管理
心臓病は完治が難しい疾患ですが、投薬による進行抑制と生活習慣の見直しによって、症状のコントロールが可能です。
- 投薬治療：ACE阻害薬や利尿剤、強心薬などを継続的に使用
- 体重管理と食事：低ナトリウム食や心臓サポート食を活用
- ストレスを避ける生活環境：過剰な運動や興奮は症状悪化の要因に
- 定期的な心臓検査：少なくとも年1〜2回の健康診断が望ましい
心臓病は症状が安定していても、油断は禁物です。愛犬の命を守るためには、継続的なモニタリングと適切なケアが不可欠です。
第1位「腫瘍（がん）」～犬の死因トップ、予防と早期発見の鍵～
腫瘍、いわゆる「がん」は、犬の死因として最も多く報告されている深刻な病気です。犬も人間と同様に、良性・悪性を問わずさまざまな腫瘍が発生しますが、特に悪性腫瘍（がん）は早期発見と的確な治療が鍵を握ります。シニア犬に限らず、若年の犬でも発症するケースがあるため、日常的な観察が何より重要です。
犬に多い腫瘍の種類とは？
犬に発生する腫瘍の種類は多岐にわたりますが、代表的なものを以下に示します。
- リンパ腫：リンパ節に発生しやすく、多くの場合急速に進行。全身の免疫機能に関係する。
- 乳腺腫瘍：特に避妊手術をしていない雌犬に多く見られる。約50%が悪性。
- 肥満細胞腫：皮膚や内臓に発生し、見た目では判断が難しいケースもある。
- 骨肉腫：特に大型犬に多く、手足の骨に腫瘍ができるタイプ。
これらは遺伝的な要因や加齢、ホルモンバランス、環境要因（化学物質や放射線など）によって発症することが知られています。
腫瘍のサインを見逃さないために
腫瘍の早期発見には、飼い主による日常のボディチェックと観察力が不可欠です。以下のような変化があれば、速やかに動物病院を受診しましょう。
- 体の一部にしこりや腫れがある
- 食欲低下や体重減少が続く
- 持続する下痢・嘔吐、元気がない
- 傷が治らない、皮膚に異常な色や出血がある
見た目に現れにくい内臓のがんもあるため、外見上問題がなくても定期検診を受けることが効果的です。
腫瘍の治療と予防のポイント
腫瘍の治療には、以下のような方法が選択されます。
- 外科手術：早期発見できた場合の最も有効な治療法
- 抗がん剤・放射線療法：転移性・進行性がんの制御や延命を目的とした治療
- 緩和ケア：生活の質（QOL）を維持するための痛みの管理など
予防の観点では、次のような行動が推奨されます。
- 避妊・去勢手術の検討：乳腺腫瘍や前立腺疾患のリスクを軽減
- 栄養管理と適度な運動：免疫力を保ち、肥満を防ぐ
- 年1回以上の健康診断：血液検査、画像診断を含む総合チェック
犬のがんは「不治の病」ではありません。飼い主の気づきと迅速な対応こそが命を救うカギです。
